自分でも虚しくなるようなO氏のでまかせだった。景気はもはやどうしようもないまでに悪くなっていた。いま不動産に手を出そうというバカは日本じゅうを探してもいないだろう。誰もがカネを使わず鳴りを潜めることしか考えていない。それが実際のところだ。だからといって、これ以上何か言えるというのか。O氏の弁明を聞いた妻は、何も言わなくなった。だが、翌日の八月九日、外出から帰ってきた妻は、居間でビールを飲んでいたO氏を見ると、ソファに腰かけた。
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夫婦の会話などあまりない二人は、家にいても一緒に過ごすことは少ない。帰宅しても、たいていはそれぞれの部屋に引っ込んでしまう。珍しいこともあるものだ、そう思いながらO氏は妻のほうを向いた。しばらく何事か考えていた妻は、O氏の目を見ずに口を開いた。「いったい借金はどうするの」。やれやれ。納得したんじゃなかったのか、この女は。また蒸し返すつもりなのか。「それは昨日も説明しただろう。おまえも納得したじゃないか。いったいどういうことなんだ」。O氏は怒りを抑えながら反駁した。だが、妻は同じことを繰り返してはO氏を責めた。私はいったい何なの!そこには自分を女扱いしてくれていないことへのうらみも混じっていたようだ。どれくらい続いただろうか。相手にしなくなったO氏に呆れたのか、妻は立ち上がると自分の部屋に入ってしまった。夫婦が寝室を別にしたのは、いつ頃だったのだろう。O氏はまったく覚えていない。「だが、冷えたのは俺が飽きやすいからだけじゃないぞ」。妻が消えてからO氏は呟いた。